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バックヤードから見えるもの。

眼鏡のレンズだけで2万円かかったというと、

みんな「高い!」と言う。

そして口々に安い店を教えてくれる。

全部「込み込み」で5千円も珍しくないらしい。

たしかに高い買い物だった。

買ったのは、

仕事場のあるビルの並びにある、

「時計、貴金属、めがね」という看板をあげている

昔ながらの店だ。

ほかに駅ビルや眼鏡専門店や安売りチェーン店もみたのに

「なんでここなんだ?」と自分でも思う。

でも、職人肌の夫と接客担当の妻が二人がかりで

店中の引き出しから

ありったけのフレームを出してきて

「似合う」「これはちょっときつく見えるね」と

いっしょに見てくれているうちに

「ここで買おう」と思ったのだ。

何度か店に出入りしていると、

老眼鏡の調整をしてもらったり

腕時計の電池交換を頼んだりと

近所のひとが入れ替わり立ち替わり

訪れているのがわかった。

ひるがって考えてみる。

わたしが週に2,3日働く店では

ここ数ヶ月、続けざまに商品の値段を下げた。

すると平日も週末並みの忙しさになった。

しかし売れても売れても

利益はさほど上がらない。

売れるのは

定価の半額以下にした商品ばかりだからだ。

今度はレイバーカットが始まった。

できるだけ人を減らす。

人件費が安くつく新人をどんどん雇う。

逆に高くつくベテランのシフトをカットする。

壊れかけた道具もだましだまし使う。

そのぶん時間がかかるが、

注文を受けてから商品を出すまで30秒でやれといわれ、

コンピュータで管理され、

翌週に結果が発表される。

こうして少しずつギリギリと

締め上げられていくような環境にいれば

気持ちがしだいに荒れてくるのも無理はない。

それは少しずつ、

でも確実に商品にも表れてくる。

バックヤードにいると

「安い、安い」と喜ぶだけですんでいることが

だれかの犠牲のうえに成り立った

奇跡的なことなのだと思える。

そしていつ

そのバランスがくずれて

大きな事故や事件が起きても

少しも不思議ではない。

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