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『さくら』西 加奈子著

2005年に出た本で、けっこう話題になったらしい。

単行本を人に借りたのだが、何しろ帯がすごい。

「ただの感動じゃないらしい」

「素晴らしい本でした」

「この本はほんとうに人を幸せにしてしまう力をもっている」

「この本の感動は、ほかの本と決定的に何か違う」

ほんとに、余計なお世話だと思う。

わたしはひねくれ者なので、これだけで読む気がなくなる。

『通天閣』を読んで面白かったから、それでも読んだけど。

「感動」を求めて本を読む人が、そんなに多いのかな。

文句はこれぐらいにして。

なんだか、今までに経験したことのない(あくまでわたしにとって)感覚の小説だった。

一歩間違うと嘘くさくなるばかりの表現が、

すんなりこころに流れこんでくるような。

たとえば、こんな感じ。

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「明日も雨や。」

そんな言葉は、何か不吉な呪文みたいに僕らの心を暗くしたし、

父さんが時折つくため息は、僕らの周りからきらきらした空気を

全て持って行ってしまうような気がした。

(316ページより引用)

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ね?

しかも舞台は関西で、登場人物の会話はベタな大阪弁だ。

それが不思議とまったく違和感がない。

何もかも順調だった5人と1匹(サクラという名の犬)の家族。

少しずつ何かがずれ始め、

ずれからひびが生じて

やがて深い亀裂となってバラバラになってゆく。

救いようのないできごとが積み重なった挙げ句、

それぞれの見た目もありようも、

かつての非の打ちどころのないような家族からはかけ離れた姿になるけれど

たがいにゆるしあい、受けいれあっていく。

いやもう、たしかに泣きましたとも。

ほかの作品も読んで、この人の不思議なちからを

もっと感じて考えてみたいと思う。

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